第175章 いい人はいい報いがあるって言ったじゃないか?

「――バン!」

スマホが床に落ちた鈍い音が、感情の渦に沈んでいた長谷川栞を現実へ引き戻した。

栞は、高野咲子の手の甲――自分が掴んだせいで真っ赤になっているそこを見て、はっとして指を離す。

「ごめん……私、ちょっと取り乱して……」

どう説明すればいいのか、言葉が見つからない。

ほんの一瞬だった。

けれど、頭の上から黒い膜をかぶせられたみたいな恐怖が押し寄せて、考える前に咲子の手を掴んでいた。

あの電話だけは、絶対にかけさせちゃいけない。

中野航平たちに、自分の病状を知られるわけにはいかない。絶対に。

「大丈夫ですよ、栞さん。焦らなくていいです。いったん座って、ゆっくり話しま...

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